テレビドラマ「ラストマン~全盲の捜査官~」をご覧になった方も多いと思います。ドラマでは福山雅治扮する全盲の皆実捜査官が研ぎ澄まされた感覚で、事件捜査を行っていきます。
皆実のようにはできませんが、私も「非日常の暗闇体験」(ダイアログ・イン・ザ・ダーク)をしてみました。
その時に私が感じた様々な「気づき」を少しでもお伝えできたらと思います
参考URL:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
・「行く」ってどっちへ
・研ぎ澄まされていく感覚
・誰でもが使いやすいもの
・見えることに囚われて
〇暗闇体験とは
イベントチラシには、「ダイアログ・イン・ザ・ダークは純度100%の暗闇の中、普段から目を使わない視覚障碍者のアテンドと対話をしながら、視覚以外の感覚を使って様々な体験を楽しむ"ソーシャルエンターテイメント"です。」とあります。都内複数ケ所で行われているうちのひとつ、国立競技場前の三井ガーデンホテルで開催されている「内なる美、ととのう暗闇。」に行ってきました。
体験は「ゆったりした服装で」とありましたが、更衣室で着替えることも可能で、荷物を全て置いて裸足になります。眼鏡も当然いらないし、携帯も置いて全くの手ぶらです。
(ダイアログ・イン・ザダークのチラシ)
ドアの中に入ると、低い位置にある小さなライトで、他の参加者がいるのがうっすらと見える感じです。当日参加者6名の1チームで、ニックネームでの自己紹介の後、立ち上がってから隣の人の肩に手を置くようにアテンダントに指示されます。
【「行く」ってどっちへ】
アテンダントの合図で部屋の照明が落とされ、まっ暗になります。・・・・(おぉ!これが純度100%の暗闇(!?)、この時点で、体がすくんで固まる感じ。)
課題として、別の部屋に移動しますが、チーム先頭の人が「では、行きます!」と、声を出してくれます。・・・・(まったく見えないけど。)
自分の動きをチームメンバーに伝えるように、とのアテンダントの指示ですが、先頭の人と続く3人は友人らしく、「行くって、どっちに進むんだよ!」とツッコミが入ります。・・・・(自分の動きを声のみで伝えるって、案外と難しい。)
【研ぎ澄まされていく感覚】
隣のメンバーの肩の動きで伝わる感覚を頼りに、少しずつ移動していきます。・・・・(移動する部屋ごとに、足に触れる床面の感触が変わっていて、手で触ると「それ」とわかる。指って、とっても認識度が高い。)
いくつかの課題をこなすうち、チームで声をかけていくのにも少しずつ慣れてきます。液体をこぼさずに容器に入れたり、隣の人に「もの」をリレーしていったり。味覚体験で渡されたものを口に運ぶのは慎重になります。・・・・(見えないものを口に入れるには、まず匂いをかぐって本能的なもの。まるで、ジミー大西!)
体験の途中で、アテンダントから白杖を手渡されましたが、一人ひとりのニックネームを呼び、私のちょうど手の位置にさっと、白杖が渡されたのは本当に驚きました。視覚障碍者のアテンダントにとって、暗闇はいつもの日常の世界で、声でその立ち位置と自分からの距離感をわかっていて行動できるものなのですね。
【誰でもが使いやすいもの】
チームで対話していた際、アテンダントが「自動販売機で飲み物を買うのは、ルーレットみたいなもの」と話していたのが印象的でした。複数種類が選べる自動販売機は一般的ですが、点字表示はありません。だから、お金を入れてボタンを押しても、何が出てくるかは運任せ。のどが渇いていたけど、レッドブルが出てきたときは、「今はこれじゃない!」と、がっかりしたそうです。でも、視覚障碍者にとって、そんな体験はきっと他のことでも、たくさんあるのだろうと、容易に想像できます。
ユニバーサルデザインという言葉も使われてはいますが、まだまだバリアフリー社会とまではいえない状況です。
【見えることに囚われて】
90分の体験で、共同作業や対話を通じて、声しか知らない初対面のチームメンバーでしたが、「今ここで感じた気づきや思いを共有できる仲間」という意識が芽生えました。暗闇の心細さの中で、肩につかまる安心感(まるでつり橋効果?)もあったし、こういったイベントに共感する価値観を持つ者どうしだったからでしょう。
さて、明るい日常空間に戻って初めてメンバーのお顔を見て、うちの娘よりも若いかもと、思った瞬間、「お若いのに、暗闇体験に興味を持たれるなんて、すごいですね。」などど、言ってしまって、はっとしました。
暗闇では声からの「人柄」だけ、性差も年齢もない、誰もが平等な関係でした。でも、見えたとたん、年齢や見た目に囚われて、年長者の立場でものを言ってしまうのでした。
〇体験を終わって
「皆いい人だし、もっと話したかったな。終わるの残念だな・・」「一生語れる体験ができました!」と話していたメンバーもいました。私も正に同じ思いでした。
私は一人で参加したのですが、暗闇の不安に耐えることでの気づきが多かったので、頼る人がいない方がかえって良かったように感じました。
ご興味をお持ちの方、「暗闇体験」ぜひ参加してみてください。
=プロフィール=
プラン行政書士事務所 代表行政書士 中西浩子
日本で暮らしたい、農業をはじめたい
さまざまな思いを全力でサポートします。