食品衛生法の改正について その2 HACCPに沿った衛⽣管理の制度化

2021/10/10
食品衛生法の改正の第2回では、目次の【4】~【6】について紹介します。
(目次)
【1】 食品衛生法の改正のポイント
【2】 HACCP(ハサップ)とは
【3】 対象事業者とその対応
【4】 小規模な営業者等とは
【5】 小規模な営業者等の取組む衛生管理計画(HACCP)とは
【6】 「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
【7】 HACCPに沿った衛生管理の実施を必要としない営業者(任意での取組)
【8】 群馬県における食品営業許可
【9】 営業の許可に関する経過措置
【10】 届出の留意事項

第1回で説明した「小規模な営業者等の取組む衛生管理計画(HACCP)」とは、具体的にはいったい何を作ればいいのでしょうか。

(図2:厚生労働省ウェブサイト/HACCPに沿った衛生管理の制度化から抜粋

HACCPに沿った衛生管理の制度化の全体像
ここでは、特に「小規模な営業者等」(図2の右)を詳しく説明します。

【4】小規模な営業者等とは
「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」の対象となる事業者
① 食品等の取扱いに従事する者の数が 50 人未満の小規模な製造・加工等の事業場、
② 製造・加工した食品の全部又は大部分を併設された店舗において小売販売する営業者
・・・・菓子、豆腐の製造販売、食肉、魚介類の販売等
③ 飲食店等の食品の調理を行う営業者
・・・・飲食店、喫茶店営業、惣菜製造業、パン製造業(消費期限が概ね 5 日程度のもの)、学校・病院等の営業以外の給食施設、調理機能を有する自動販売機が含まれる
④ 容器包装に入れられた食品又は包まれた食品のみを貯蔵、運搬、又は販売する営業者
⑤ 食品を分割して容器包装に入れ、又は包んで小売販売する営業者などが該当
・・・・米屋、青果店、コーヒーの量り売り等

【5】小規模な営業者等の取組む衛生管理計画(HACCP)とは
これまでも求められてきた衛生管理に加え、
① 衛生管理計画の作成
② 計画に基づく実施
③ 衛生管理の記録・振り返り
この3点が基本です。
ありがたいことに、各業界団体が作成し厚生労働省が確認した手引書が厚生労働省ウェブサイトに掲載されています。(92業種)ぜひ、参考にしてみてください。
 
(記載例)厚生労働省ウェブサイト/
食品等事業者団体が作成した業種別手引書/業種別手引書「小規模な一般飲食店」から抜粋
◎記載のポイント
・様式にしている項⽬について、
「問題のあったときにはどうするか」
「いつ」「どのように」
「なぜ必要なのか」の対応を考えて記載します。
難しく考えないで、普段から実施している内容を記録して残して、振り返ることです。

・今までの食品衛生責任者又は食品衛生管理者以外にHACCP に沿った衛生管理の実施に際して、新たな有資格者の設置は必要ありません
・HACCP は工程管理(ソフトの基準)であり、施設設備等ハードの整備を求めるものではありません。現行の施設設備を前提で作成することが可能です。

【6】「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
HACCPに沿った衛生管理の制度化に伴い、食中毒等のリスクや、食品産業の実態を踏まえ、営業許可業種(政令で定める34業種)以外の事業者の届出制が創設されました。図3の改正後の営業者は、公衆衛生への影響が大きい順に「要許可業種」、新たな「要届出業種」、届出対象外の3業種に分類されました。
 
(図3:厚生労働省ウェブサイト/ "営業許可制度"の見直し 及び "営業届出制度"の創設
  
 

図3の右の改正後の、新たに創設された営業届出制度の対象「要届出業種」は、これまで許可が必要なかった事業者についても、営業届出制度の対象となります。「許可営業」及び「届出対象外営業」に該当しない営業を営む営業者は、一部の届出対象外の営業者を除き、管轄の保健所に「営業届出」をする必要があります。

もう少し、細かく営業許可業種の見直しの中身を見ていきます。

(図4:厚生労働省ウェブサイト/営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報から抜粋
◎営業許可業種の見直しの考え方(図4)
〇食中毒等のリスクや、規格基準の有無、過去の食中毒の発生状況等を踏まえ、許可業種を再編
→漬物製造業、水産食品製造業、液卵製造業等を新たな許可業種として設定
→現行の許可業種のうち、リスクが低いと考えられる一部の許可業種は届出の対象へ(例:乳類販売業、氷雪販売業、食肉販売業・魚介類販売業の一部)
〇原則、一施設一許可となるよう、
・一つの許可業種で取り扱える食品の範囲を拡大
→例1:菓子製造業を取得している施設が調理パンを製造する場合、そうざい製造業や飲食店営業の許可は不要
→例2:清涼飲料水製造業を取得している施設が生乳を使用しない乳飲料を製造する場合、乳製品製造業の許可は不要
・ 原材料や製造工程が共通する業種を統合
→例:みそ製造業と醤油製造業を統合して「みそ又はしょうゆ製造業」

では、次回は群馬県における食品営業許可などを紹介します。

=プロフィール=
プラン行政書士事務所  代表行政書士  中西浩子
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